止まらないスピードが、日常をアートに変える

スケート文化

スケート文化は、20世紀初頭のローラースケートや屋内スケートリンクを中心とした娯楽・競技活動から始まりました。しかし1970年代のアメリカ西海岸、特にサンタモニカやベニスビーチ地区（通称ドッグタウン）では、Z-Boysを中心とした新しい「ストリートスケート文化」が誕生しました。彼らはサーフィンの動きをスケートボードに応用し、路上や空き地、排水路など都市空間を舞台に自由なトリックを生み出しました。

Z-Boysのメンバーであるトニー・アルバ（Tony Alva）は、自身のブランド ALVA Skateboards を立ち上げ、スケートボードのデザインや文化的表現を広げました。さらに、1966年に ポール・ヴァン・ドーレン（Paul Van Doren） によって創業された Vans は、スケートシューズを通じてストリートスケート文化の発展に大きく貢献しました。

この新しいスケート文化は、単なる移動手段や競技ではなく、個性や自己表現の象徴となり、仲間とのコミュニティや音楽、ファッション、アートと結びついたサブカルチャーとして発展しました。特にジム・フィリップス（Jim Phillips）のグラフィックデザインは、サンタクルーズ・スケートボードのアートワークを手掛け、スケートボードのビジュアルアイデンティティを確立しました。

また、1981年創刊のスケーター専門雑誌「スラッシャー（Thrasher）」にスケーターのライフスタイルなどが紹介され、ストリートのスケータースタイルが世界中の若者に影響を与えました。その後、ストリート系スケートファッションブランドの「ステューシー（Stussy）」「シュプリーム（Supreme）」「パレス・スケートボード（Palace Skateboard）」など次々とストリート系アパレルが登場して、ストリートスケート文化の象徴として世界的に広まりました。

このように自由で挑戦的なスケーター精神は、既存の価値観に縛られない若者文化の象徴となり、アメリカだけでなく世界の若者文化に大きな影響を与え、スケートボードやストリートファッション、音楽、アートの潮流にも影響を及ぼしました。