型破りな大衆カルチャーの挑発的美学！

ロウブロウ文化

1970年代後半、アメリカ西海岸で誕生したロウブロウアートは、ホットロッドやカスタムカー文化、パンクロックやタトゥー、アンダーグラウンド・コミックスなど、従来は「低俗」とされた大衆文化を積極的に取り込み、鮮やかで挑発的なビジュアル表現を展開した。創始者のひとりであるロバート・ウィリアムスをはじめ、エド・ロスの「ラットフィンク」やヴォン・ダッチのピンストライプは、ホットロッドカルチャーと密接に結びつきながら、その後のサブカルチャーやロウブロウカルチャー全体に強い影響を与えていった。

このムーブメントは、アート界の主流からは距離を置きつつ、雑誌やグッズ、ストリートを通じて広まり、やがて「ポップ・シュルレアリスム」とも呼ばれる現代アートの潮流へと発展する。その精神を象徴する媒体のひとつがアメリカで刊行された『ギヤヘッドマガジン』であり、そこではホットロッド、タトゥー、パンク、ロウブロウアートといった要素が同一の文化圏として紹介され、アートとライフスタイルの境界を超えるロウブロウカルチャーの交差点を形成していた。

日本でもこの動きは90年代以降に紹介され、村上隆による「スーパーフラット」や横尾忠則のポップでサイケデリックな作風が重ね合わせて語られるなど、美術と大衆文化を横断する試みとして受容された。また、ストリートファッションや雑誌、カスタムカー文化を通じて若者たちに浸透し、現代のサブカルチャーやロウブロウカルチャーの精神が息づいている。