コレクション: フードラム|HOODLUM
フードラム文化
戦後から1960年代にかけて、アメリカの若者文化の中で「フードラム(hoodlum)」と呼ばれる不良少年たちが登場しました。彼らは社会の規範に反抗し、暴力や不良行為を象徴する存在として大人社会から恐れられました。ファッションとしてはレザージャケットやジーンズ、リーゼントの髪型を身にまとい、バイクやホットロッドに乗る姿は「アウトサイダー」的な若者像を体現していました。
このフードラム像は、ハリウッド映画『理由なき反抗(Rebel Without a Cause, 1955)』のジェームズ・ディーンによって広く知られるようになり、彼の孤独で反抗的なイメージは世界中の若者に強い影響を与えました。また、ロックンロールの熱狂と重なり、エルヴィス・プレスリーの音楽やファッションにもフードラム的要素が色濃く反映されています。
アメリカのフードラムと呼応するように、イギリスでは1950年代に「テディボーイ(Teddy Boy)」が生まれ、エドワーディアン風のファッションにロカビリー音楽を組み合わせ、大人社会からは不良として恐れられました。その後1960年代には「ロッカーズ(Rockers)」が登場し、革ジャンとバイクを愛好する姿はフードラム文化のヨーロッパ的展開とも言えます。
日本でも1950年代末から1960年代にかけて、映画や音楽を通してアメリカの不良文化が輸入され、「グレイ(ぐれい)」と呼ばれる不良少年たちが現れました。語源は「ぐれる(道を外れる、不良化する)」という言葉からきており、社会や学校に適応できない若者たちを指す俗称でした。彼らはリーゼントや革ジャン、ジーンズを身にまとい、大人社会に反抗心を示しました。その姿は日活アクション映画や石原裕次郎の銀幕スター像にも色濃く投影され、ロカビリー音楽や当時の喫茶店文化とも結びつきました。
やがて「グレイ」という呼び名は1960年代後半以降、時代と共に変化し、1970年代以降には「ヤンキー」と呼ばれる若者文化へと発展します。ヤンキーはツッパリ、番長、暴走族と結びつき、学ランやボンタン、リーゼント・パンチパーマなど独自のファッションと集団性を持ったスタイルとして定着しました。こうして、グレイは日本のヤンキー文化の原型とも言える存在となり、若者の反抗心や自由への憧れを象徴する文化として受け継がれています。
このように、フードラムは単なるアメリカの不良少年を意味するだけでなく、世界の若者が抱いた大人社会への反抗心や自由への憧れを象徴する存在であり、テディボーイやロッカーズ、そして日本のグレイ、さらにヤンキーへと連なる国際的な若者文化の系譜を形成しました。

