コレクション: カタログカルチャー|CATALOG CULTURE

カタログ文化

カタログ文化の源流は、アメリカにおける シアーズ・ローバック(Sears, Roebuck & Co.) に遡ります。1888年に創刊されたシアーズのカタログは、通信販売(通販)用に作られたカタログで、アメリカ中西部の農村や都市部の家庭に幅広い商品を届ける手段として人気を博しました。衣類や家具、工具などあらゆる商品を網羅し、写真や文章で理想的な暮らしのイメージを描く手法が、後のカタログ文化の基礎となりました。

一方、アウトドアブランドの L.L.Bean は1912年に創業され、特に ブーツやアウトドア用品のカタログ を通じて、アメリカの自然志向ライフスタイルを広く紹介しました。1968年に創刊された ステュアート・ブランドが編集長を務めた『ホールアースカタログ』 は、紙面づくりにおいてL.L.Beanのカタログを参考にした媒体であり、アウトドア用品や自給自足の情報だけでなく、オルタナティブな生き方を提案する内容として注目されました。当時のカウンターカルチャーやヒッピー文化に影響を受けた若者たちに広く読まれ、DIY精神や自然との共生、サステナブルなライフスタイルを紹介することで、単なる商品紹介を超え、価値観や生き方を提示する文化的ツールとして機能しました。この影響を受け、日本では1972年に『宝島 全都市カタログ』が出版され、オルタナティブなライフスタイルや都市のカルチャーを日本の若者に紹介し、アメリカの憧れのライフスタイルが若者たちの価値観やファッション、ライフスタイル選択に影響を与えました。

日本では1975年に 『Made in U.S.A. Catalog』(監修:松井宏昌)が登場し、アメリカ製品への憧れやライフスタイルの提案を若者に広めました。さらに1970年代には、『ダブダボ』、『Do Catalog』、そして 『平凡パンチ』のメンズカタログ などが登場し、若者に最新のファッションやライフスタイルを発信しました。1976年に創刊された 『POPEYE(ポパイ)』 は、都市生活者や若者向けのファッション雑誌でありながら、カタログ雑誌的な要素を持ち、アイテムやブランドを写真と文章で紹介することで、読者にライフスタイルの理想像を提案する媒体としても機能しました。また、日本の若い女性向け雑誌『anan』や『non-no』も、カタログ文化の影響を受けてファッションやライフスタイルのトレンドを紹介し、若い女性たちの憧れや価値観に影響を与えました。

これにより、日本の雑誌は単なる情報提供にとどまらず、ライフスタイルやファッションを提示する文化的ツールとして定着し、後の ビームスなどのセレクトショップの文化やスタイル提案にも大きな影響 を与えました。また、こうしたカタログ文化は 紙媒体からデジタルへの進化を遂げ、eショッピングやオンラインメディアへと発展 していきました。