Welcome to The Culture Museum!|カタログ文化の雑誌伝説

アメリカの憧れ、Made in U.S.A catalog

 

はじめに

カタログ文化の雑誌伝説へようこそ!
こちらで紹介する雑誌は、これまでに若者文化のライフスタイルに影響を与えた文化的価値のある希少カタログ雑誌を知ることにより、私たちのこれからの未来の新しいライフスタイルを思考し、日常がより豊かな生活をするための一助になればと願っています。

それでは

日本の若者文化に影響を与え、現在にも語り継ぐ伝説の雑誌をご覧ください。


出典:Made in U.S.A catalog -2 1976 - 読売新聞社

 

『多くの若者たちは、自由になるための道具を必要としていた。』

  

カタログ文化とは

カタログ文化とは、商品やサービスを紹介するカタログを通じて、消費者と販売業者の関係を構築する文化のことです。カタログは、商品の詳細な説明や写真を掲載し、商品を選ぶ際に役立つ情報を提供します。また、カタログを通じて商品を購入することができるため、小売店舗がない地域でも商品を手に入れることができます。

出典:Sears Roebuck Catalog 1952

 

カタログ文化の起源

生活必需品を販売する目的でカタログ文化は、19世紀から20世紀にかけてアメリカで発展しました。特に、シアーズローバックカタログが全国的な知名度を得たことで、カタログ文化はアメリカの文化に深く根付いたものとなりました。

カタログは、当時のアメリカ社会の中で、商品の豊富さと購買力の高さを象徴するものとして、広く認知されていました。 カタログは時代が進むにつれて様々なテーマのライフスタイルを紹介する『カタログ雑誌』に進化発展しながら、毎年、多くの出版会社と企業が連携して流行を生み出してきました。現在では、世界中で限定商品や特別なセール情報が掲載されたカタログを待ち望む人々に向けて、インターネットの普及により、カタログはオンライン上で閲覧することが主流となっています。

しかし、当時の文化的な価値を知るための希少ヴィンテージカタログをコレクションする人々や、様々な分野の研究開発を目的に、ヴィンテージカタログ雑誌の資料収集をおこなう企業やデザイナーなどとても多く、カタログにまつわる文化は今もなお色褪せることなく根強く残っています。

出典:Sears Roebuck Catalog 1894 

 

シアーズローバックカタログ

シアーズローバックカタログとは、アメリカの小売業者であるシアーズが出版していたカタログのことです。1888年に初めて発行され、シアーズの創業者であるリチャード・W・シアーズが手がけたものでした。 シアーズローバックカタログは、アメリカの家庭における日用品から、建築資材や自動車、農業用具などの幅広い商品を扱っており、全国にある小売店舗がない地域でも商品をメールオーダーのシステムで購入することができました。そのため、アメリカの文化に大きな影響を与え、アメリカ史においても重要な存在となっています。 しかし、インターネットの普及に伴い、カタログの需要が減少し、2018年にシアーズは経営破綻しました。現在、シアーズローバックカタログは、ヴィンテージ商品としてコレクターの間で人気があり、オークションなどで高値が付けられることもあります。

 


出典:Sears, Roebuck and Co by pinterest

 

Sears, Roebuck and Co

1886年に創業者Richard Warren Searsがミネアポリスに「R.W. Sears Watch Company」を設立。1893年「Sears, Roebuck and Co」に社名を変更。1896年 メールオーダーの通信販売事業を本格的にスタート。最初の大判総合カタログを発行。「聖書の次に読まれている本」とされアメリカのどの家庭にも500ページにもおよぶこの電話帳のような分厚いシアーズのカタログが置かれていた。当時、アメリカ大手有名百貨店でメールオーダーカタログのパイオニア的存在でした。

 

 

出典:Sears Roebuck Catalog No111 ,Sears Roebuck Catalog1896 by pinterest




雑誌の役割

雑誌とは、一定の周期で刊行され、様々なトピックについて記事や写真、イラストなどを掲載した出版物のことです。雑誌には、ニュース、ファッション、ビジネス、スポーツ、エンターテインメント、科学技術、料理、旅行、趣味など、多岐にわたるテーマがあります。 雑誌は、一般的に月刊誌、週刊誌、隔週刊誌、季刊誌などの形態で発行され、定期購読や書店での販売など、様々な方法で入手することができます。また、最近では、オンラインでの電子書籍版も増えており、スマートフォンやタブレット端末で簡単に読むことができるようになっています。

出典:ワンダーランド創刊号 1973 - 晶文社

 

雑誌は、読者が興味を持つ記事や情報を提供することで、エンターテインメントや知識の獲得、情報収集などの役割を果たしています。また、広告が多数掲載されていることが多く、商品やサービスの宣伝媒体としても重要な役割を担っています。 

「カタログ雑誌」の普及

「カタログ雑誌」とは、商品やサービスの情報を集めたカタログのような形式の雑誌です。一般的に、衣料品や家具、家電製品、スポーツ用品、美容用品など、様々な商品の情報を掲載しています。カタログ雑誌は、通販の普及とともに注目を集めるようになりました。通販サイトでは、インターネットを通じて商品の情報や写真を閲覧することができますが、カタログ雑誌は、紙媒体で商品を手に取り、実際に目で見て確認できることがメリットの一つです。

出典:POPEYE 1976 SUMMER 創刊号 - 平凡出版(現マガジンハウス)

 

また、カタログ雑誌は、読者にとっても役立つ情報を提供しています。例えば、ファッション雑誌のようなカタログでは、トレンドのアイテムやスタイリングのアイデア、コーディネートの提案などを掲載しています。そのため、ファッションの参考にするだけでなく、自分に似合うアイテムを見つけることもできます。

最近では、カタログ雑誌もオンラインで提供されるようになり、スマートフォンやタブレット端末で簡単に閲覧することができるようになっています。これにより、より多くの読者に商品情報を提供することができるようになりました。


カタログ文化の雑誌伝説 

若者文化に影響を与えた、カタログ文化雑誌の誕生ヒストリー




豊かなライフスタイルへの憧れ

アイビーとコンチ

1960年代の後半、日本の若者たちはそれまでのアメリカやイギリスの伝統的な暮らしを意識したトラッドスタイルをベースにした日本流アイビー・スタイルを脱ぎ捨て、より自由でお洒落な進化を遂げたヨーロピアンなコンチネンタル・ルックへと徐々に変化していった。それは、多くの若い人は時代と共に変革されたもっと素敵で上質な新しい暮らしを求めていたからだ。

出典:007/Goldfinger/Sean Connery 1964 - UA by pinterest ,チックメイト創刊号 1974 JUN広告 P168 - 講談社

 

ここで述べる「コンチネンタル・ルック」とは、1950年代から1960年代にかけてヨーロッパで流行した上品でエレガントなファッションスタイルのことを指します。主に男性ファッションにおいて使用されることが多く、コンチネンタルファッションの特徴は、アイビー・スタイルが直線的なデザインが特徴に対して、コンチネンタル・ルックは立体的なデザインが特徴です。イタリアなどのヨーロピアンな要素のシルエットやモノクロームのカラーリング、高級感のある素材などが挙げられます。また、アクセサリーを上手に使い、洗練された印象を与えることも特徴の一つです。

ヒッピー文化

1970年代に近づくにつれてコンチネンタル・ルックは、よりヒッピーテイストの要素が強く感じられる自由なスタイルと変貌していった。それは、ベトナム反戦運動などの社会情勢の影響や世界的経済の不況、学生運動が活発化するなどを理由に、一部のヒップな人達の間でこの混沌とした時代を生き抜くための思想がライフスタイルやファッションにも影響を与えたからである。そして、そのスタイルは世界中の若い人を中心に広がりをみせていった。

 

ジーンズ革命

出典:DO CATALOG 1976  BIG-JOHN広告 - 産経新聞出版局 

 

1970年代に入ると多くの若い男子学生は髪を伸ばし、ファッションにおいては、活動しやすい実用性の衣類を好んだ。それまで外国の映画や雑誌でしか見たことがなかった貴重な米国製ジーンズを古着などで見つけ、ギアアイテム(ギア=道具)としてジーンズファッションを好んだのだ。当時は、ジーンズはある意味において、自由の象徴としてのアイコン的存在だった。徐々に日本でもジーンズメーカーが誕生し始めてアメリカ製の品質を真似ながら、同等レベルの日本製ジーンズを完成していった。そのおかげで、男女問わず若い人の間で大流行した。

出典:Woodstock Music and Art Festival 1969  by pinterest 

 

次第にこのジーンズが、若い人の間でこれからの自分らしい生き方としての思想にまで影響を与えることとなった。不都合な矛盾を感じる既成概念の固まった社会からの脱却、自立を求め、より自由な暮らしを理想とする考えのきっかけになったのだ。 多くの若いミュージシャンもジーンズを履き、社会の混沌を表現したメッセージソングを披露し、自立のための生活を訴えたのだ。そのムーブメントは、世界全体で起こっていたのだった。



 

出典:DO CATALOG 1976  P306 - 産経新聞出版局 


『アメリカの若者たちが自然回帰のライフスタイルを求めた。』


ビート・ジェネレーション

経済の流れが加速する中で、その流れから離脱して、ある意味において本質的な人間らしい暮らしを理想とする考えをもったビート・カルチャーの影響を受けた若者たちがいた。

「ビート・カルチャー」とは、1950年代から1960年代にアメリカで興った文化運動のことを指します。この運動は、ビートニクと呼ばれる若者たちによって主導され、文学、詩、音楽、芸術、哲学などの領域に影響を与えました。

ビートニクは、従来の社会や価値観に反発し、反権威的な姿勢を持っていました。彼らは、自由な表現や精神的な探求を重視し、普遍的な真理や個人的な体験を追求することを目指しました。また、都市のコーヒーハウスなどで集まり、詩の朗読や音楽の演奏などを行い、交流しました。

ビート・カルチャーは、アレン・ギンズバーグの1956年の詩集『HOWL ハウル』やジャック・ケルアックの1957年にヴァイキングプレスから出版された『ON THE ROAD オン・ザ・ロード』などの作品が代表的であり、また、ジャズなどの音楽が人気を博しました。様々なビート文学の詩の朗読とジャズのセッションは多くの若い人たちに影響を与えました。

ビート・カルチャーは、ヒッピー文化や反戦運動などの後のカウンターカルチャー運動にも影響を与え、アメリカの社会や文化に大きな変革をもたらしたとされています。

1960年代の終わりに近づく頃、このような影響を受けた変革者の彼らが考える暮らしのためのカタログ雑誌が出版されたのであった。




出典:The Last Whole Earth Catalog 1971 - Portola Institute/Random House

 

Whole Earth Catalog ( WEC )



1970年代に入る数年前にアメリカで「Whole Earth Catalog」が出版された。

ホールアースカタログとは、1968年にアメリカ合衆国で初めて発行された、環境問題や持続可能性を考えたライフスタイルを提案するカタログのことです。スチュワート・ブランドが編集長を務め、アメリカのサンフランシスコで発行されました。

このカタログ雑誌は、1968年秋号(初版)から始まり、年2回(春号・秋号)のペースで1971年まで定期刊行され、1974年に最終号を出版し廃刊した。その後、アップデイト版やデジタル版などで復活している。多くのヒッピーやハッカー達に影響を与えた伝説の雑誌と称されています。

出典:Whole Earth Catalog Fall 1968

 

創刊号(1968 FALL)の表紙を飾ったのは、1966にブランドが起こした運動(NASAに対して地球の写真を公開する請求運動を開始)が功を奏し、NASAから発表された宇宙に浮かぶ地球の写真を載せた。

このカタログは、1960年代にアメリカの思想家であり発明家のバックミンスター・フラーが提唱した「宇宙船地球号」思想から生まれたものであった。「宇宙船地球号」とは、地球を宇宙船にたとえた概念です。

Richard Buckminster Fuller / 1895-1983

バックミンスター・フラ-は、20世紀を代表する技術家であり、「現代のレオナルド・ダ・ヴィンチ」と言われている人物。フラーの発想はエコロジー・ムーヴメントやインターネット的思考を生むきっかけにもなったとされます。

出典:Richard Buckminster Fuller operating manual for Spaceship Earth 1969 , 宇宙船地球号操縦マニュアル ダイヤモンド社 1973

 

フラーは地球を「宇宙船地球号 (Spaceship Earth)」と呼び、地球自体を有限のリソースを持つ閉じたシステムとして捉えました。この概念は、「壮大な宇宙の中で、地球上のすべての生命が共に旅をしており、地球全体が一つのシステムであり、その資源を適切に管理し、持続可能な形で利用する必要がある」という考え方です。フラーは、地球上の人類が共に協力して持続可能な未来を築くことが必要であると訴えました。またフラーの富の概念は、「それは、一般的に私たちの大部分に認められている貨幣ではなく、人間の生命を維持・保護・成長させるものとした。それらを達成するための衣・食・住・エネルギーを、そして究極的にはより効率的に成し遂げるための形而上的なものであるノウハウの体系であるテクノロジー、それ自体が更に発展し続ける、それこそが「富」の本質であるとした。」また、「自分の時間をより有効な探査的な投資に解放すれば、それは自分の富を増やすことになる」という独自の概念をもっていた。


ホールアースカタログの目的

出典:The Last Whole Earth Catalog 1971 P442 - Portola Institute/Random House

 

ホールアースカタログは、このような思想を礎にエコロジカルな生活スタイルを提唱することを目的にしており、環境保護に関する情報や、オーガニックな商品、自給自足の生活に必要な情報などが掲載されていました。また、自然と共存するライフスタイルに関する情報や、地球上の多様な文化を紹介するなど、総合的なライフスタイル誌としても注目を集めました。

カタログの内容は、これからの" 環境と調和した新たな生き方 " に役立つものとして、1.全体システムの理解(宇宙・地球上)、2.シェルター(住居)と土地、3.インダストリーとクラフト(DIYの解説)、4.コミュニティーと遊牧民族、5.コミュニケーション、学習(サブ知識など含める)の構成となっている。

出典:The Last Whole Earth Catalog 1971 P3- Portola Institute/Random House

 

また掲載する商品については、独自の選定基準を定めている。
1.役に立つ道具
2.自立教育に関係のあるもの
3.高品質もしくは低価格
4.メールにて簡単に入手可能
以上である。
*掲載商品は、各販売元または、ホールアースカタログにてメールオーダーで購入できる。

この選定基準とシステムが画期的なものであり、個人が簡単に掲載された商品を購入できることで、このカタログはとても重宝されたのです。それは、なによりも掲載されたどの製品も、現在にも通じる有効な本質的なものだったからである。このことが、このカタログの伝説的なものと評された理由の一つだろう。




L.L.Bean Catalog

ホールアースカタログのレイアウトデザインは、ブランドの父の影響によるもので、父は熱心なL.L.Bean(USAアウトドアーメーカー)のカタログをコレクションしていたため、それらのデザインを参考にしたとされる。

出典:L.L.Bean Catalog  Fall 1970 , Fall 1950



 ホールアースカタログのセレクトアイテム

出典:The Last Whole Earth Catalog 1971 P110-111 - Portola Institute/Random House

 掲載される商品は、ヒッピーたちにとってクールな道具ばかりだった。


 

出典:The Last Whole Earth Catalog 1971 P264- P265  - Portola Institute/Random House

彼らのコミューン(共同生活)に必要な情報や商品がカタログとして掲載されていたからだ。

 

出典:The Last Whole Earth Catalog 1971 P324 - P325 - Portola Institute/Random House

このカタログ雑誌は、後にヒッピーたちにバイブルのように扱われた。




Whole Earth Catalog 

→ 1968 Fall  → 1969 Spring  1969 Fall  1970 Spring  1970 Fall → 1971 → 1974

出典: Whole Earth Catalog 1968 - 1974  - Portola Institute/Random House

 

1971 - The Last Whole Earth Catalog 

やがてヒッピー文化が低迷期を迎えると同時期の1971に、カタログの総集編として全488ページにおよぶボリュームの“ザ・ラスト・ホールアースカタログ”を出版し、定期刊行は終わりを告げた。この号は大ベストセラーとなった。

1974 -  Whole Earth Epilog 

1968年から続いたホールアースカタログは1974年に“ザ・ラスト・ホールアースカタログ”の続編として最終号の“ホールアース・エピローグ”が出版され、この裏表紙にバックミンスター・フラーの次の言葉を飾って廃刊した。

 

出典:Whole Earth Epilog 1974 - Portola Institute/Random House

 

Stay hungry. Stay foolish.

ハングリーであれ、愚かであれ

ホールアースカタログは、カウンターカルチャーに影響を与えたヒッピーの出版物の一つとして知られています。Apple社のスティーブ・ジョブスの愛読書として有名である。

現在でも、ホールアースカタログは多くの人々に愛され、環境保護やライフスタイルの変革に向けた啓蒙の役割を果たしています。


ALTERNATIVE LIFE 

このホールアースカタログの出版以降、この「新しい生き方」のメッセージは、環境問題や社会問題に対する意識を高めるとともに、自然と共存するライフスタイルに興味を持つ人々に支持され、1970年代にはアメリカ全土に広がるムーブメントに発展しました。ベトナム戦争が終結を迎え、アメリカに戻った若者たちは、バックパックに荷物を詰め、街からアウトドアへと向かい、自然や健康を意識した。

ホールアースカタログが提案した「これからのライフスタイル」を考える中で、自分達が持つべきものを改めて見直したときに、本物志向のアイテムや質実剛健なもの、またコンピューターやデジタル・テクノロジーにスポットが集まり、アメリカだけでなく、日本でも大きなムーブメントへと駆け上ったといえる。

このホールアースカタログの影響などにより、日本のヒップな若者たちがいち早くこのような生き方を真似しだしたのであった。日本の出版社もこのような若い人たちに向けて、オルタナティブ(もう一つの)な生き方を提案する本質的なライフスタイルを紹介する必要が求められた。

そんな中、日本の若者たちに向けて、アメリカ文化に見習うものとして、アメリカの生活を支えるアメリカの製品を紹介するための雑誌が出版されたのである。







出典:Made in U.S.A catalog  1975 - 読売新聞社

 

『日本の若者たちへ、ニュー・ライフスタイルを追え』




アメリカ文化のカタログ化


1975年に日本で最初のアメリカ生活文化の全般を紹介する若者向けのカタログ雑誌『Made in U.S.A catalog』が出版されたのであった。この雑誌がきっかけとなり、その後に様々なライフスタイルを若者たちに向けて紹介するカタログ雑誌の文化が日本で華開いたのである。

  

出典:Made in U.S.A catalog  1975 , Made in U.S.A catalog- 2  1976 - 読売新聞社

 

Made in U.S.A catalog 

メイド・イン・U.S.Aカタログとは、アメリカ国内で製造された製品を紹介するカタログのことです。アメリカ国内で生産された製品の品質や信頼性をアピールし、アメリカ製品を支持する消費者のニーズに応えることを目的としており、 日本の若い世代へアメリカ製品を紹介する機会を与えた雑誌内容である。

メイド・イン・U.S.Aカタログは、さまざまな製品を紹介しており、服飾品、家具、食品、雑貨、工具、楽器、オーディオ、趣味などの製品が数多く掲載されています。また、アメリカ国内で生産された製品には、独自のデザインや特徴があることも多く、その特徴やブランドの由来などもくわしく紹介されています。環境問題に配慮した製品や、地域に根ざした小売店や古着屋など、リアルタイムな取材がとてもユニークな紙面でわかりやすく紹介。 当時、日本ではまだ馴染みのないアウトドアーのセレクトショップなども現地取材しており、イラストレーターの小林泰彦氏の現地レポの取材内容は必見である。

 

出典:Made in U.S.A catalog  1975 P205-P206, P195 - 読売新聞社

 

 

 
1975 - Made in U.S.A catalog 

出典:Made in U.S.A catalog  1975 - 読売新聞社

208mm × 274mm / 274P / ソフトカバー 
昭和50年6月1日発行
出版社:読売新聞社  構成:寺崎央  レイアウト:新谷雅弘 

70年代のアメリカの健康的な暮らしを支える日用品をはじめ、趣味のものまで幅広く若者文化に影響を与える商品が数多く紹介されている。当時は日本では入手できないものが多く、まさに日本の若い人たちの憧れが詰まったカタログ雑誌であった。取材から出版にいたるまで約半年間の時間を要し、実に内容の充実した迫力のあるライフスタイル雑誌に仕上がっています。

 

1976 - Made in U.S.A catalog-2   

 

出典:Made in U.S.A catalog-2  1976 - 読売新聞社

208mm × 274mm / 322P / ソフトカバー 
昭和50年12月1日発行
出版社:読売新聞社  構成:寺崎央  レイアウト:新谷雅弘

70年代のリアルタイムの現地取材により、アメリカの若者文化をカタログ形式で紹介したスクラップ・ブック。ファッションを中心に、現地学生の生活や考え方などを取材したライフスタイル雑誌である。 

 

 

出典:Made in U.S.A catalog -2  1976 - 読売新聞社


『日本の若者たちへ、意識革命のすすめ』


メイド・イン・U.S.Aカタログは、70年代の日本の若者たちにとても大きな衝撃を与えました。それはアメリカの若者たちが、日本よりもアグレッシブで健康的な活動をしていたからである。そして、彼らのライフスタイルを参考に、衣食住の生活全般の新しい考え方に影響を与えました。

 

出典:Made in U.S.A catalog  1975 - 読売新聞社


特にメイド・イン・U.S.Aカタログの影響
は、質実剛健なものへのこだわりが加速して、丈夫なアイテムを必要とする若者たちが増えたことでした。アメリカでは、丈夫なアイテムなどを示す言葉で「ヘビーデューティー」なアイテムという言葉で表現されていました。若者たちはこのヘビーデューティーなものに意識が向いていったのです。

Heavy Duty

ヘビーデューティー(Heavy Duty)とは、「重い負荷に耐えうる」という意味を持ちます。ヘビーデューティーという言葉は、アメリカにおいて主に機械や自動車部品、工具、家電製品などの分野で使われ、高い耐久性や強度を持つ製品を表現するために用いられます。 ヘビーデューティーの製品は、通常の使用状況では耐えられないような重い負荷にも対応できるよう設計されています。たとえば、ヘビーデューティーな工具は、常に大きな力がかかる作業や、厳しい作業環境でも使用できるように作られています。また「ヘビーデューティー」という言葉は、服飾分野においても用いられます。服の場合、通常の服よりも厚手で丈夫な生地を使用していることを表現するために用いられます。

メイド・イン・U.S.Aカタログでは、質実剛健で本物なものをこの言葉を用いて表現しました。長く使えるいいものはコストパフォーマンスの高いものとして紹介しました。

出典:Made in U.S.A catalog -2 1976 P115 - 読売新聞社 

 

ヘビーデューティー・ファッション

メイド・イン・U.S.Aカタログの影響をもっとも受けたのがファッション業界であった。

「ヘビーデューティー・ファッション」とは、強靭な素材やデザインを用いた、丈夫で耐久性のあるファッションスタイルを指します。主にアウトドアやワークウェアなどのシーンで活躍するアイテムが多く、機能性や実用性を重視したデザインが特徴的です。

メイド・イン・U.S.Aカタログは、当時はまだアウトドアやワークウエアという言葉が一般化されていない時代に、アウトドアやワークウエアのギアファッションを日常に取り入れて暮らすアメリカの若者たちをいち早く取材して、それをヘビーデューティーというスタイルとして紹介しました。

ヘビーデューティーな服は、普段着としてだけでなく、アウトドアやスポーツ、仕事など、さまざまな場面で活躍することができるため、長期間使用することができ、コストパフォーマンスが高いとされています。 ヘビーデューティーという言葉は、製品の品質を表現するためにも用いられます。耐久性や強度が高い製品は、通常の製品よりも価格が高いことが多いですが、その分、長期間使用することができるため、コストパフォーマンスが高いとされています。

代表的なアイテムとしては、デニムジャケット、ワークシャツ、キャンバスパンツ、レザーブーツ、ダウンジャケットなどが挙げられます。また、ヘビーデューティーファッションは、ワークウェアやアウトドアウェアとしての機能性だけでなく、ファッションとしての魅力も持ち合わせていることが多く、スタイリッシュな雰囲気も兼ね備えています。

 

出典:Made in U.S.A catalog - 2  1976 P120-P121- 読売新聞社

 

質実剛健なヘビーデューティー・ファッションは、アメリカのワークウェアブランドやアウトドアブランドを中心に70年代に発展してきました。

現在でも、カジュアルなスタイルに欠かせないアイテムとして、多くの人々に愛されています。特に、ストリートファッションやハイファッションにも、ヘビーデューティーなアウターやパンツなどの要素を取り入れたものが数多く作られるようになりました。 

Do It Your Self

ホールアースカタログやメイド・イン・U.S.Aカタログの雑誌の影響はさらに、日本の若者たちへ普段の暮らしにDIY( Do It Your Self ) 精神を持つことの大切さも教えてくれました。暮らしのために必要な知恵を持ち、面白がってなんでも自分でするということ。それは、もちろん地球や環境をよく考えて、より人間らしいシンプルな暮らしを目指すことの大切さをカタログ形式の雑誌を通じてメッセージを伝えたのです。

 

出典:Made in U.S.A catalog - 2  1976 P162, P141 - 読売新聞社



伝説のカタログ雑誌として

メイド・イン・U.S.Aカタログのカタログ雑誌には、単なる70年代のアメリカの製品や文化を伝えることだけではなく、各ページの取材内容を通じて、本質的な現在でも通じるような日常生活をより良く過ごすための考え方を知ることで、未来における『グッドライフスタイル』が具体的にイメージができていくユニークな仕掛けが、この雑誌の伝説的なカタログ雑誌と称されているポイントではないかと感じます。不思議とそのような気持ちを感じさせてくれます。

当時の日本の若者たちに向けたこのカタログ雑誌のメッセージには、「新しいライフスタイルには、しっかりと自分自身の目で確かめて、生活全般にかかわるすべてを自らが自由に選択する重要性を見出すこと」を、アメリカの若者たちの陽気なビジュアルイメージを加えながら、「ニュー・ライフスタイル」という生き方として提案したのである。それは、現在でもけっして色褪せることない新鮮なメッセージなのです。

 

出典:Made in U.S.A catalog - 2  1976 - 読売新聞社


『グッドライフスタイルは終わらない』

このメイド・イン・U.S.Aカタログがきっかけで日本の若者たちに向けて、次に紹介するカタログ雑誌を登場させました。

出典:POPEYE 1976 SUMMER 創刊号 - 平凡出版(現マガジンハウス)

 

当時まだあまり知られていないアメリカ西海岸の健康的な若者たちのライフスタイルをリアルタイムに取材し、ファッション、スポーツ、アート、ミュージックなどの最新カルチャーなどの情報とアパレルやグッズなどをカタログ形式で紹介する「ポパイ」の出現が、様々な雑誌やアパレル業界に多くの影響を与えたのです。

 

POPEYE

出典:POPEYE 1976 SUMMER 創刊号 

 

1976年(昭和51年)創刊 
昭和51年8月1日発行
出版社:平凡出版(現 マガジンハウス)  初代編集長 : 木滑良久

「ポパイ」とは、日本の10代後半から20代前半の「シティーボーイ」という都会に視点をおいた、男性のファッション雑誌として一世を風靡した。1976年に創刊され、初期はアメリカ西海岸の健康的なイメージを与えるライフスタイル情報を提供し、スポーツ、音楽、アート、カルチャーなど、幅広いテーマのアメリカのユースカルチャーを紹介した雑誌である。 「ポパイ」は、日本の若者文化に深く根ざしポップカルチャーとしてのアメリカンカジュアルを牽引する存在として、大きな影響力を持ちました。 「ポパイ」は、ファッション誌としての要素だけでなく、エッセイやインタビュー、写真などのコンテンツも豊富で、読者に多様な情報を提供することで、独自の世界観を築きました。このポパイは、日本における様々な若者文化のライフスタイルを紹介するカタログ雑誌としての見本的存在として確立しました。

このポパイをサンプルに、日本では様々なカルチャーのカタログ雑誌が次世代の若者たちに向けて出版されていったのです。

 
日本のカタログ文化の雑誌紹介

70年代には若者向けに数多くのカタログ雑誌が出版されました。ほんの一部をご紹介します。

平凡パンチ・Men's Catalog 1976 SUMMER号

出典:平凡パンチ Men's Catalog 1976 SUMMER - 平凡出版(現マガジンハウス)

昭和51年7月1日発行
編集 / 石橋謙三 出版 / 平凡出版(現マガジンハウス)

日本の若者たち向けにヘビーデューティーな日本製品とアメリカ製品を紹介するカタログ雑誌。この出版の1ヶ月後に同社から「ポパイ」が創刊。


DO CATALOG - U.S.A '76
週刊サンケイ特別増刊  

出典:DO CATALOG 1976  - 産経新聞出版局 

昭和50年12月15日発行
編集 / 神谷光男 出版 / 産経新聞社

もうひとつのグットライフな暮らしをテーマに、70年代リアルタイムのオルタナティブな生き方を実践している自立したアメリカの若者たちを取材したカタログ雑誌。1976年SPRINGの2号も出版されており、当時の日本の若者たちに影響を与えた、もうひとつの伝説的カタログ雑誌。

 宝島11 全都市カタログ 1975

出典:宝島11  全都市カタログ 1975 - JICC出版局

昭和50年11月1日発行
編集 / 小泉徹 出版 / JICC出版局

日本のカタログ文化の実験的な取り組みが面白い。シティーボーイな若者たち向けの自立支援のためのカタログ雑誌。

 

別冊宝島① 保存版 全都市カタログ

出典:別冊宝島① 保存版 全都市カタログ 1976 - JICC出版局

昭和51年4月1日発行
編集 / 大西祥一 出版 / JICC出版局

日本流都市生活者向け、知覚の扉を開かせるカタログ雑誌 保存版。厳選された様々なテーマで知覚を促すための本が紹介されている面白いカタログ雑誌。

 

だぶだぼ 25号 夜明けの文化生活カタログ4 保存版

出典:だぶだぼ 25号 夜明けの文化生活カタログ4 保存版- スピン

昭和49年3月20日発行
編集 / 森洋 出版 / スピン

日本のヒップ達のニューライフスタイルカタログ雑誌。ある意味においては、日本の最先端な人たちがこんな意識革命をしていたのかというパロディー的な内容。

 

CATALOG DABU DABO 36号 

出典:CATALOG DABU DABO 36号 - スピン

昭和51年1月20日発行
編集 / 森洋 出版 / スピン

アメリカウエストコースト流、もう一つの暮らし方のキャタログ雑誌。熱量の高いカタログ文化の雑誌づくりを感じるとてもオシャレなカタログ雑誌。


 

出典:POPEYE 1976 SUMMER 創刊号 P6 - P7  - 平凡出版(現マガジンハウス)


『カタログ文化の雑誌伝説展」

あとがき

いかがでしたでしょうか。このカタログ文化の雑誌伝説は、日本の若者文化に影響を与えた雑誌を厳選してご紹介しました。しかしながら、ほかにもさまざまなカルチャーに影響を与えた雑誌として紹介できていないものもたくさんあります。今後、少しづつではありますが、より専門的なサブカルチャーに特化した若者向けのカタログ文化雑誌のご紹介をオンラインミュージアムにて充実していければと考えています。

このカタログ文化の雑誌は、過去のものではなく、これからの新しい暮らしに役立つ、いつ見ても新鮮なものとして存在して、私たちに語りかけてくれます。現代のデジタル中心社会が加速する中で、次世代の若者たちのニュー・ライフスタイルには、よりアナログ的で本質的なライフスタイルを求められるのではないかと感じます。人間の求めるものは、いつの時代もシンプルで調和した自然の原理原則にみられるような人間らしい生き方に立ち返っていくように思います。この伝説のカタログ雑誌を眺めていると、そう強く感じさせてくれます。そして、このカタログ文化の雑誌伝説は、次々と形態を変えながら、また新たな伝説が誕生し、決して本質は変わることなく永遠につづくのだろうと感じさせてくれます。

Text by Gene - SPs.

 



出典・引用・参考文献:
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